論理的思考 分解の勧め

新規事業の「分解思考」で見えてくる世界
はじめに:論理的に説明できる人って何者?
「論理的に説明できる人」。そんな言葉を聞くと、「明快に整理された図」「誰も反論できない説明」「白か黒か」みたいな印象を抱きがちです。でも、私が考える“論理的に説明する”というのは、そんなに堅苦しいことじゃなくて、むしろ「物事を分解できる」というシンプルな力だと思っています。
自分の頭で「なぜ?」「なんでだろう?」と問い、そこで出てきた仮説を積み重ねていく──そのうえで「分解してみましょう」と言える人こそが、論理的に説明できる人だと思うのです。
では具体例として、身近な事例である「ドラッグストア」が業績を伸ばしている背景を使って、この“分解思考”を見てみましょう。
事例:ドラッグストアが増えている、売上が伸びている
まずは“事実”として、業界データから。
- 日本国内のドラッグストア業界の販売額は、2024年度に 約10兆307 億円 に達し、前年比+9.0%と大きく成長しています。 ([コマースピック][1])
- また、2024年上期には市場全体が4兆3,045億円、その前年同期比で+7.9%。食品とビューティーケアの伸びが特に大きかったと報じられています。 ([チアジョブ][2])
- さらに、訪日外国人(インバウンド)客のドラッグストア利用率はなんと 97.4% にも上るという調査もあります。 ([訪日ラボ][3])
このように、「ドラッグストアが増えている」「売上が伸びている」というのは、感覚だけではなく数字としても裏付けがある話です。
分解してみよう:なぜ「ドラッグストア」が成長しているのか?
では「ドラッグストアが増えている(あるいは売上が伸びている)」という結果に対して、なぜそうなったかを分解してみます。私の仮説はこうです:
事象:ドラッグストアが増えている/売上が伸びている。
→ 原因①:ドラッグストアの売上が増加している。
→ → 原因①‐a:購入者(来店客)が増えている。
→ → 原因①‐b:一人当たりの購買額(客単価)が増えている。
→ 原因①‐aの「購入者が増えている」の背景に:インバウンド客(訪日観光客)が増えている。
→ 原因①‐bの「客単価が増えている」の背景に:薬品以外(食品・日用品・化粧品など)の取り扱いが増えている。
図にするとこんな感じです。
ドラッグストアが増えている
↑
ドラッグストアの売上が増加
↑ ↑
来店客数の増加 客単価の増加
↑ ↑
インバウンドの増加 薬品以外商品の増加
このように、「なぜ?」→「その原因は?」→「さらにその原因は?」というように、少なくとも3階層くらいまで掘ることで、「結果」から「要因」「更に要因」の構造が可視化できます。
なぜこの“分解”が新規事業に効くのか
この思考法が新規事業において強力な理由は3つあります。
-
整理・説明力が上がる
何かを提案するとき、ただ「こんな事業をやりましょう」と言うのと、「結果がこうで、原因をこう分解したので、その因子に着目して新規事業を設計しましょう」というのとでは説得力がまるで違います。関係者を巻き込みやすい説明になります。 -
仮説発想&検証の出発点になる
「原因①‐a:インバウンドの増加」という因子を発見したら、次に「では、そのインバウンドがどうやって取り込まれているのか?」と仮説を出せます。たとえば「多言語対応」「免税対応」「立地」「商品構成」。これらを検証すれば、次の新規事業アイディアのタネが出てきます。 -
新規事業のターゲットが具体化される
上の例なら、「インバウンド客向けの薬品以外の商品を作れないか?」「ドラッグストア向けに、小型家電・ヘルスケアガジェットを提案できないか?」といった具体的な発想に繋がります。ぼんやり“市場が伸びるので新事業やろう”というのとは違い、どこに着目して、どこに仕掛けるのかが明確になります。
AIの使い方:分解思考にどう活かすか
最近では ChatGPT 等の AI ツールが話題ですが、分解思考のプロセスにも非常に役立ちます。ただし、ポイントは「AIに全部任せる」ではなく、「自分で仮説を立てて、それをAIで検証する」という流れをおすすめします。
例えば:
- あなた「なぜ購買単価が上がっているか? 仮説:薬品以外商品の取り扱いが増えている」
- AI「はい、実際にドラッグストアでは食品・化粧品の売上比率が上がっています。例えば〜」(データを提示)
- あなた「OK、その中で特に成長が大きいのは食品カテゴリ。では“ドラッグストア向け食品PBブランド”って市場ある?」
- AI「はい、このようなニーズの報告があります…」
このように、自分で仮説を出し→AIで裏付けを取る→さらに視野を広げる、という使い方が「思考を鍛える」意味でも良いです。AIはあくまでも“補助ツール”です。
まとめ:分解思考、あなどるなかれ
- 論理的に説明できる人とは、物事を分解して「なぜ?」「その原因は?」「さらにその原因は?」と掘ることができる人です。
- 分解によって、整理・説明・発想の土台が整い、新規事業のアイディアも具体化しやすくなります。
- 実際のデータでいうと、国内のドラッグストア業界は「来客数+客単価」双方の伸びがあって、その背景に「インバウンド需要」「薬品以外商品の取り扱い拡大」があります。
- AIを活用するなら、自分の仮説を立てて、それをAIで検証する流れを作ると、思考力が育ちます。
- 普段から「結果→原因→原因の原因」の3階層くらいを意識して、身近な現象を分解してみてください。すると、「次に何を仕掛けるか」が見えてきます。
ぜひ、次に気になる“変化”を見つけたら、すぐに分解してみてください。こっそりノートに図でも描いておくと、その“分解図”が新規事業アイデアのヒントになりますよ。
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引用URL一覧
- 「インバウンドの増加はドラッグストア業界にとって追い風」…インバウンドで売上増の報告 ([日興フロッギー][4])
- 「訪日客のドラッグストア利用率は97.4%」…ドラッグストアがインバウンド需要を集めている証拠 ([訪日ラボ][3])
- 「2024年度のドラッグストア売上10兆307億円(前年比+9.0%)」…業界全体の成長データ ([コマースピック][1])
- 「食品カテゴリーが前年同期比+10.9%、ドラッグストア“コンビニ化”の動き」…薬品以外商品の伸びを示すデータ ([チアジョブ][2])
- 「ドラッグストアの食品・非食品ミックスと成長力」…業態の構造変化を検討するレポート ([DEI][5])
Author: Tuta | Published on: 2025年10月24日